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祝!櫂人ホームページ開設記念座談会 by 顧問&立上げメンバー

 

出席者

顧問: 篠本賢一

立上げメンバー: 青木恵 東條将孝 甲斐照康 脇田美穂子

 

以下 篠=篠本賢一  青=青木恵  東=東條将孝  甲=甲斐照康  脇=脇田美穂子

東= 今回櫂人のホームページ開設にあたり、櫂人に興味をもって下さっている皆さんに、より櫂人の事を知ってもらおうとの企画で、顧問と立上げメンバー4人に集まってもらい、約3年前の劇団立上げ当時から現在に至るまでの話をしてもらおうとの事で集まってもらいました。

   ぶっちゃけトークも含めて、皆さん宜しくお願いします。

 

東= まず、劇団立上げ当時の話からしましょうかネ?

 

甲= そもそもは、皆が在籍して篠本さんが教えていた某シニアタレントスクールの授業後の飲みの席で、自分たちの劇団やろうかとの話が出たのがキッカケでしたよね。

 

東= そうそう、俺はそのシニアクラスのカルチャースクール的な内容に行き詰まりを感じていたし、更に上のレベルの演技者になるには、より高い内容の稽古と演劇的経験が必要で、これ以上は自分で何かを始めないとダメだと感じていたのですぐに話に乗った。と言うより、自分から言い出した。

 

脇= 私はシニアクラスも卒業し、スクールから紹介されるエキストラの仕事にもウンザリしていて、もっと違う演技の経験がしたかったし、あの年の震災で多くの人々が亡くなったのを見て、何かを始めなくちゃと強く感じ始めてたので参加を決めました。

 

甲= 僕はテレビや映画の端っこにでも映れればオモシロソウ、くらいの気持ちでシニアスクールに入ったんだけど、篠本さんのクラスに入って舞台演技に嵌まってしまい、やっぱり上の段階を目指したくなっていたので参加を迷わなかったです。

 

青= 私はその飲みの席には居なかったんだけど、新劇団立上げの話は漏れ聞いていたの。当時映像演技のクラスにも通ってたんだけど、映像は何か私のやりたい事じゃないなあと思っていたので、誘われた時は、「やるなら、まあ乗るか」的なノリで決めたのね。というのは主人がスタッフ(照明)なので、劇団やるとなると、演じるだけじゃなくて、裏の劇団運営実務に取られる時間や費用の大変さが朧げながらも判っていたので、「それ私たちで出来るの?」と若干腰は引き気味だった。

 

東= まあ、40才以上の家庭や生活のある大人は、ある程度先を見ちゃうし、青木さんのように考えるのが普通だよね。他にも何人か誘ったけど、スクールでお芝居やるのはいいけど、劇団をつくって本格的にやるのはチョットなあ~、って感じでダメだった。結局は「芝居が演りたい!上手くなりたい!」という勢いだけで、この立上げメンバーでやっと劇団が結成された訳だ。

青= それから、劇団名を大空を舞うカイトのイメージと、常に船を漕ぎ前進し続ける、努力し続ける人の使う櫂(かい)のイメージから「櫂人(かいと)」って決めたんだよね。

 

脇= 次に、自分たちではどんな事をして先に進めたら良いか全く判らないので、誰かインストラクターをさがそうって事になって篠本さんにお願いして・・・・

 

甲= 立上げ前から、篠本さんにはチョット打診もしてたし、我々は篠本さんに舞台演技を教わった門下生だから、プロの演出家で経験豊富な篠本さんに依頼するのがベストだろうって事だった。

 

東= 篠本さん、最初に話を聞いた時はどう感じましたか?

 

篠= シニアスクールで舞台演技を教えている理由の一つに、レッスンを通じてシニア世代に今までの実生活では経験した事のない体験をしてもらい、より豊かな人生を送ってもらえたらって事があるんだけど、そのシニアクラスから自ら劇団を立上げたいという人たちが出てきたのは正直うれしかった。

   だけど、劇団運営の難しさと厳しさも知っていたので、劇団のビジョンや方向性もない状態で、「芝居が演りたい!」って気持ちだけで劇団を立上げたのは時期尚早だとも感じた。

   それに私は「遊戯空間」を主宰していて自分の表現の場があるし、シニアではすでに劇団JIBAと関わっていたので、設立当時の櫂人に関わる意味があまり感じられなかった。

 

東= そのお話は、ときわ台のファミレスで我々全員でお聞きしましたよね。そこで我々立上げ団員は櫂人のビジョンや方向性、どんな演目がやりたいのか話し合い、シニア演劇祭への参加や施設巡業公演などの案も出ましたが、ハッキリした方向性は決められませんした。

 

篠= 演劇の知識と経験が致命的に乏しかったからなあ~。

 

脇= それじゃー、演劇の初歩からの学習と身体トレーニングから始めて、その過程でビジョンや方向性を探して行こうということになったんだよね。

 

青= 初めての稽古は板橋区の施設、下板橋駅前集会所だった。

 

東= みんなで「何をするのかナ~?」とポケーッと篠本さんを待ってたら、怒られた。

 

甲= いきなり集会所の床掃除から始めさせられました。

 

脇= そうそう。

 

青= 篠本さんに「劇団を始めたのなら、自分たちの稽古場は自分たちで用意する。早めに来て準備して、稽古が始まったら、心身共にすぐに演技に集中できるようにしなくちゃダメだ!」って言われた。

 

篠= それは演劇をやるものとしては当然の事! だって、それが公共施設であっても自分たちで演劇を創造していく現場だよ。トレーニングでは寝転がったり、顔を床に付けたりもするし。それに稽古前に掃除をしたり準備運動をするのは、ある意味では精神的に、稽古場に来るまで居た日常生活から、非日常的な演劇世界にスイッチする役にも立つんだ。初回に私をポーッと待ってるだけで、みんなはそんな「超」が付くほど、劇団というものについて常識的な事を何も理解していなかったからなァ~。

 

脇= 私たち、それまでスクールのクラスでは、教室に行って先生が来るのを待ってただけだったから「エッ、そうなの?」って少しビックリしたな。

 

甲= シニアクラスでは、インストラクターから与えられたことを指示に従ってやっていただけでしたからね。自分たちで稽古場づくりから始めるという考えは正直ありませんでした。

 

東= 俺は「いよいよ今日からだ!ワクワクする。何をするのかナ?」って思って待ってただけだから、「そうか~、劇団で芝居をやるって事は、自分で感じている以上に覚悟が必要だな」と自分の甘さに気付いて、衝撃的だった。

 

青= それからアトリエそらが出来るまでの半年くらいの間は、篠本さんの協力で板橋区の地域センターや集会所をジプシーの如く借り回って稽古したね。

 

篠= まぁ、君らは自分たちで稽古場を安く探す当てが無さそうだったので、私が普段使っていた所を紹介したんだけどね。

 

甲= ありがとうございました。我々には稽古場探しが大問題でしたので本当に助かりました。

 

東= 稽古と言えば、演劇知識の座学もやったな。これも篠本さんお薦めのテキストを用意して始めたんだ。

 

青= 新国立劇場で「日本/海外作家略年譜」と「<要点>日本演劇史」を買って来て、「演劇小辞典」をネットで手に入れて・・・。

 

東= その3冊の座学は何か、ワッ!俺今、演劇勉強してるじゃん!って感じで、以前のシニアクラスに無かった知的満足感があったな。

 

篠= あの3冊をざっと読んでみて演劇用語、外してはいけない劇作家、おおまかな日本の演劇史が判ったでしょ。

 

甲= 戯曲の読み合せもしましたね。

 

脇= だいぶ読んだよね。

 

東= 今調べると、ギリシャ悲劇から始めて、シェイクスピア、モリエール、イプセン、ワイルド、チェーホフ、ゴーリキー、ブレヒト、ソートン・ワイルダー、テネシー・ウィリアムズ、アサー・ミラー、イヨネスコ、ベケット、ジャン・ジュネ、等々を読んでますな。

 

青= この読み合せはスゴク今役に立ってる。読む戯曲の理解度がアップしてるのが自分でも判るもん。

 

脇= 私もそう思う。当初は取っ付きにくいとか、テーマがヤダとか思って読んだ物もあったけど、今は戯曲のテーマ、作者の人物像、作品の時代背景や演劇史上の価値なんかの探り方が判ってきて、やっぱり読んで良かったなと思えるようになったもの。

 

甲= 皆、読みも上手くなったんじゃないですか。

 

東= お前に褒められてもなぁ~。

 

篠= 演劇を少しでもやってたら常識で知っている戯曲ばかりだけど、まだ日本人作家の戯曲が全然読み足りない。渡したリストに沿って、戯曲の読み合せは続けて行きたい。

 

東= 身体トレーニングも色々とやったな。

 

甲= ランニングや背走・・・

 

東= きつかった。

 

甲= ヨガ、ストレッチ、能のすり足の練習、舞踊から発想した体幹意識強化の体操。

 

東= きつかった。

 

青= でもだいぶ体柔らかくなったんじゃない?

 

東= でも、当時はきつかった。今は慣れたけど。

 

脇= 私は大丈夫だったよ。

 

篠= 役者は豊かな身体表現のために、柔軟な身体の維持とその可動領域を広げるためのトレーニングが絶対に必要なの、だからきつくてもやる。

 

甲= 篠本さんの紹介で、他劇団での受付や客席係、前説や舞台設営などのスタッフ研修もしました。

 

脇= 劇団員としては貴重な経験をさせてもらったね。

 

青= そんなこんなで稽古しながら、やっと2013年の1月と7月にブレヒトの「例外と原則」をアトリエそらでやった訳だけど、みんなどうだった?

 

東= 俺は、発表会とはいえ初めての公演が出来た事がとにかく嬉しかった。それと演目も以後の櫂人の方向性にとって重要だったと思うな。

 

青= 狭いアトリエそらで四方をお客様に囲まれて芝居したのは刺激的だったね。

 

 

甲= 1月と7月で違う演出で挑戦して、みんな役者として進歩出来たと思いますよ。

 

東= 篠本演出ここにありって感じだったよな。

 

脇= 1月はとにかく一生懸命で、ブレヒト物という事をあまり意識出来なかったけど、7月には演出も変化して、歌や踊りを入れたり、芝居もより客観的で知的なブレヒトチックなものを目指したりしてね。この公演の後、演劇やってる人とブレヒトを含めて演劇の話が出来るようになってる自分を発見してビックリしてるの。

 

甲= 「例外と原則」は櫂人のレパートリーにしたい作品ですよね。

 

篠= あのアトリエ公演はやって良かった。櫂人にとって劇団として貴重な経験になったと思うよ。私も1月と7月の2回やる事で、演出を短期間のうちに練り直す経験が出来たし、その効果を確認することもできたからね。

 

東= 続いて今年4月に三遊亭圓朝の「怪談牡丹燈籠~お札はがし~」を、他団体に協力というか、共催という形で公演したんだけど、あれはどうだった?

 

甲= あれ結構急な話でしたよね。2月に演る事が本決まりになりましたから。

 

東= 篠本さんからこんな話があるけど、櫂人どうよ?ってお話し頂いて、急だったけど、外部でやらせてもらえるチャンスだったんでスゴク有難かった。

 

青= 小屋入りから舞台設営、ゲネ、本番から楽日までアトリエそら以外の施設で経験出来たのも良かったと思う。

 

脇= あと、他の団体と小屋を共有しながら公演するという特殊な状況だったけど、みんなにとって色々と勉強になる事がたくさんあったと思う。

 

甲= 例えば?

 

脇= 同じ圓長作品なのにアプローチの仕方が全然違ったり・・・

 

青= 演者の舞台演技に対する取り組み方も色々だなっとかね。

 

東= スタッフさんとのコミュニケ-ションはとっても大切だなとかな。

 

甲= 僕は他団体と共催するのって、楽屋の使い方や空き時間の舞台の共有など色々難しいなと思いました。

 

青= 公演としてはどうだった?

 

東= 良かったんじゃないかな。時代劇なのにシンプル、だけど作りは凝っていてエンターテイメント性も高かったよ。ピーター・ブルックの「なにもない空間」的演劇で、もう一方には失礼ながら勝った感はある。

 

青= 最後のは言い方微妙だよ~・・・

 

甲= そうですョー!

 

篠= おもしろかったかどうかは、観ていただいたお客様方の判断にゆずりましょう。

 

脇= と、東條さんが怒られたところで話題を変えます。櫂人も団員が現在12名になって当初の倍以上の所帯になりましたが、そこの所どうですか?

 

東= この頃、やっと櫂人の方向性が見えて来たと思うんだよね。我々シニアの演技は、演者が言葉と身体と心を、そしてそれらをつなぐ呼吸を自在にコントロールして表現することという前提に加え、自らの人生経験を演技にプラスできるっていう意識を今では共有してるよね。演目にしても、洋の東西は問わず、様々な人間の普遍的側面をテーマにしている古典を中心とした本格的な戯曲に取り組みたいと考え始めている。そんな中で、櫂人の活動に賛同して団員が増えていってるのは、スゴク嬉しいんだ。

 

青= 嬉しいですネ。

 

脇= 大変喜ばしい事だと思います。

 

甲= でも、もう少し、20人位になりたいですね。

 

青= そうねえ。20人いれば演目のレパートリーも格段に拡がるし、スタッフワークも今以上に良く出来るもんね。

 

篠= そう思う。20人になれば劇団としていろいろな展開が可能だし、財政的にもやりやすくなるよ。

 

東= シニアから演劇を始める人って、俺たちもはじめはそうだったんだけど、劇団活動は表と裏の仕事が表裏一体で、細々とした裏方仕事の苦労があって、決して舞台の上で演じるだけではないということを理解してる人が少ないのが残念です。

 

篠= それはまぁ、人それぞれ演劇に対する意識が違うからしょうがない。でも劇団に入って芝居やりたいって人は、舞台に立つためなら裏方でもなんでもヤルというぐらいの意気込みは持ってないとね。一本の芝居を上演するには、役者はもちろん、作品に関わるすべての人の協力と互いの尊重が必要だから。それに加えて言うなら、団員が増えれば今後必ず役につけるとは限らないわけだから、そうなってもスタッフとして、その公演に参加したいかどうかが問題。

 

青= そういう気持ちで、入りたいって人は大歓迎で、演劇経験の有無はあんまり関係ないよね。

 

甲= 僕もそう思います。僕自身芝居上手くないし。

 

篠= そうだね。参加の意志さえあれば、その人に合った指導が出来ると思うよ。

 

東= 団員を増やすには、もっと櫂人を世間の人に知って貰わないといけない。

 

青= という事で、世間により櫂人を知ってもらう意味も含めて、10月の劇団櫂人第1回公演、ウジェーヌ・イヨネスコ作、篠本賢一演出の「犀」は本当に頑張らないとダメね。

 

甲= 今回は外部から客演も招いて、どんな芝居になるかワクワクしてます。

 

脇= 私は最近、別の劇団に客演しましたが、やっぱり私の芝居の故郷は櫂人なんだって強く思いました。櫂人で「犀」を頑張って演りたいです。

 

東= 篠本さんには今回も演出をして頂きます。今の櫂人は篠本さんが居なかったら、存在してなかったと思ってます。我々は篠本さんの演劇に対する姿勢を信頼してますし、演劇においては師匠であり、舞台を作り上げていく上では同志だと思ってます。櫂人の第1回公演を成功させるように我々は精一杯頑張りますので宜しくお願いします。

 

篠= おいおい、改まって気持ち悪いな。だけど櫂人も3年目を迎えて当初より大分劇団として体裁を成してきたよね。このまま劇団が成長すれば、シニア演劇界に一石投じる存在になる可能性も秘めていると感じ始めてるし、君たちと一緒にやって行こうという気持ちだよ。だから今度の第1回公演はお互いに頑張ろう。こちらこそ宜しくお願いしますよ。

 

青= えー、それでは長々と櫂人設立からの座談会をしてきましたが、今度の第1回公演「犀」の話しでキレイに落ち着きましたので、これで座談会を終了したいと思います。本日は皆さんありがとうございました。

 

篠= ありがとうございました。

 

脇= お疲れ様でした。ありがとうございます。

 

甲= ありがとうございました。

 

東= ありがとうございました。本当にこんだけでイイの?

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